ヴァセリン(ワセリン)・ガラス


着色剤としてウランを加えたガラスです。
ですので、ウラン・ガラスとも言います。

ウランというと放射性物質を思い浮かべる方も多いと思います。
確かに、ウランを含むガラスからも放射線は出ていますが、
我々が日常生活で浴びている自然放射線に比べても極微量なので
心配には及びません。

ウランを含むガラスの歴史は古く、紀元1世紀には使われていたようです。
黄色~緑色の彩色に使われていましたが、当然、色が出るメカニズムは不明でした。
また、この彩色に使われる成分は秘密にされていたので、いわば門外不出の
色合いだったようです。

それが19世紀になると、科学(化学)の発達により、金属単体としてのウランが
得られるようになりました。そして、1850年頃までには、ウランは英国にてガラスの
着色剤として利用されるようになりました。

ヴァセリン・ガラスには、様々な色があります。
ウランを混ぜたガラスを「ヴァセリン」と呼ぶのは、最もポピュラーだった
(作りやすかった)のが黄色で、その色がヴァセリン・クリームの色に似ている
ためだったと言われています。それ以外の色としては、紫色、緑色、茶色、黒色にも
なります。見た目の色には共通点はないのですが、いずれの色の場合でも、
蛍光(ブラックライト)をあてると、緑色の蛍光を発するのが特徴です。

おまけの話
カメラのレンズにも、ウラン入りのものがあります。
しかし、意識的に入れたものではなく、結果的に入り込んでしまったものです。
そのようなレンズでは、レンズの性能を上げるためにトリウムを入れていました。
ところが、トリウムは放射性物質で、最終的にはβ崩壊によりウランに変化してしまうのです。
そうなるとレンズが黄色に変色してしまいます。
このようなレンズが盛んに作られていた1940年ころは、モノクロ写真がほとんどで、
問題はありませんでした。モノクロ写真をしたことがある方ならご存知だと
思うのですが、赤~黄色のカラーフィルターを使ってコントラストを調整する
ことがありますので、たとえレンズが黄色く変色しても、ある種の味わいとして
許容され得たのです。ところが、カラー全盛になると、カラーバランスの問題から
黄色い変色レンズは受け入れられないものになったのです。その結果、1970年代以降、
このようなレンズはなくなってしまいました。