5.ジャックナイト ツインカムの完成まで


ジャックナイト ツインカムの完成まで

 

ジャックナイト ツインカムの完成まで

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ジャックナイト ツインカムの完成まで



JackKnightTwinCam

1970年代後半、自動車民間車検工場を経営していた父親の協力の下、英国車及びその部品等を輸入販売することを主とした(株)日欧貿易サービスを設立した。 その後、1986年より、英国人エンジニアのニック・ブロトスと共に16バルブ・ツインカム・エンジンを搭載したミニを作ろうという案が出て、その製作に取り掛かかった。一方、KAD社でもツインカム・エンジンが出来上がり、KAD社よりそのエンジンを使ってほしいという申し出があった。そのため、KAD社より2基のエンジンを購入し、早速、1基は新車のミニに搭載し、もう1基は、その当時ERAターボを開発中のERA(English Racing Automobiles)社にて、24時間連続で数日間テストベッドにかけてテストした。その結果、色々な問題点が判明した。また、僕のツインカム・ミニに対するコンセプトは、ボンネットの加工などボディの改造することなしにオリジナルのミニに搭載できるロード用としてのD.O.H.C.(16vツインカム)エンジンを載せることだったのだが、このエンジンは、ロード用にするにはほぼ不可能で、そのためには莫大な費用ガかかることがわかった。その上、エンジン自体の背が高いために、ボディの大幅な改造が必要であったため、このエンジンを採用することは断念した。 そういう理由で、ツインカム・エンジンの開発を1からやり直すことに決めた。


その間、日本でより順調なビジネスを展開するためには、英国に本拠を置くことが得策と考え、1988年、英国南部の町ウィンチェスターに社屋を購入し、マーズ・スピードUK(Mars Speed Co, Ltd)を設立した。マーズ・スピードUKは、ERAとの協力の下で、試行錯誤を重ねながら、約2年の歳月をかけて、ツインカム・16バルブ・エンジンを遂に完成させた。当初、そのエンジンはマーズ・スピード・ツインカム・エンジンとして発売されたが、1991年の後半にERAグループが、そのグループ会社の1つであるJack Knight Development(ジャックナイト ディベロップメント)社を切り離す方針を打ち出し、マーズ・スピード社に買収してほしいという話が持ちかけられたため、1992年にジャック・ナイト社株を全株購入し、シャック・ナイト社の経営権を100%握ることになった。そこで、このエンジンはジャック・ナイト・ツインカムとして発売されることになった。2004年3月、経営陣の不正経理が発覚するまで、マーズ・スピードは実質上、ジャックナイトを経営していたのだが、残念なことに、その後ジャックナイト社は悪徳なウェールズ人により乗っ取られる形で倒産に追い込まれ、現在は破産管財人の手に渡っている。


ここで、少し、ERAとジャック・ナイト・ディベロップメントの歴史を紹介したいと思う。 まず、ERAの歴史は、1933年にさかのぼる。その後、Zenithキャブレーター社に買収され、そのZenith社はSolexキャブレーター社に買収され、現行のEngineering Research &Application Ltdに社名変更された。ジャック・ナイト・ディベロップメントの前身であるJack Knight社は、1940年代にJack Knight氏によって設立され、フォーミュラ・クーパー(Cooper Car Co)のギア・ボックスを始め、1960代にはワークス・ミニの4速・5速ギア・ボックスを開発し、1980年代にはフェラーリー以外の全てのF1コンストラクターに、ステアリング・サスペンション・ギアパーツを開発・供給しており、その他の有名なところでは、ジャガーXJ220のステアリング・サスペンションを手掛けていたのだが、Jack Knight氏の死を前に家庭内などの問題のため、ERA社に買収されたのである。