9.ジャックナイト ツインカム+5速ギアボックス


ジャックナイト ツインカム+5速ギアボックス 

•マーズスピード ストーリー

ジャックナイト ツインカム+5速ギアボックス 

1994年に発行されたモーターファン別冊の 特集MINIスペシャルで掲載された記事です。

1994年に発行されたモーターファン別冊の 特集MINIスペシャルで掲載された記事です。

16-Valve Twin Cam and 5-Speed Gearbox


崇高なるBMC製Aシリーズエンジンに新しい命を吹き込むためのテクニックは、一朝一夕にできあがったものではない。ジャックナイトの開発部テクニカルディレクターであるジョフリー・ギバンズは、こう説明する。“ミニがモデファイされるようになって、もう30年にもなります。ですから、ツインカムが出てきても何の不思議もありません。BDAのツインカムがミニに搭載されていますし、その他さまざまなカンパニーでAシリーズ用のツインカムヘッドが開発されてきました。”  


“ただし、それらのコンバーションの問題点は、エンジンがクルマのボディからはみ出してしまうことです。ボンネットを加工して、ミニのクラッシックなシェイプを崩さなければならないのです。これは正しい方向とはいえません。我々の信念は、ボンネットやサスペンションやサブフレームに手を加える必要がなく、Aシリーズエンジンブロックもストックのままで載せることができる16バルブツインカムヘッドを設計することでした。”   


そしてマーズスピードのジェネラルマネージャー、ショーン・ミドルトンによれば “プロジェクトに時間を要したというのも、主にそのためなのです。”     “4年前に着手して、完成までに2年以上かかったのですから” ということだ。   


ジャックナイト・ツインカムのアロイシリンダーヘッドの中は全く従来どおりで、燃焼室はペントルーフタイプのオリジナル・バタフライ仕様の形状になっていることから、ピストンはスタンダードを使っている。 オールアロイのヘッドは、カムの駆動にコグドベルトを使い、インテイク28mm、エクゾースト24mmのバルブをソリッドタペットで開閉させている。


そして、研究開発中のクルマは、コンプレッションレシオを上げ、カムも含めてプロトタイプのパーツを組み込んで120bhpまでパワーアップしているが、スタンダードのジャックナイト・16バルブヘッドとウェバー32DCOEツインキャブレーター(キットにはインテイクとエグゾーストマニフォールドも含まれている)を取り付ければ、即座に100bhp/6200rpmのパワーと85lb-ft(11.75kg-m)のトルクを手に入れることができるのである。


ヘッドの開発について興味はつきない。そこでテリー・サンガーに開発エンジニアの立場から語ってもらうことにした。   


“私が最初にツインカムヘッドを組んだのは2年半前、ERAに勤めていた頃のことでした。カムパターンの設計に6ヶ月。この種のプロジェクトにつきものの、プーリーの問題にも当然ぶつかりました。プーリーがかさばって、インテイクマニフォールドとカムのスペースがなくなってしまうのです。しかし、これは加工方法を工夫することで解決しました。また、ブリーザーに問題が発生して、オイルがリークしたこともありました。キャブレーターに関しては、もっとサイズを上げればパワーを稼ぐことができることはわかっていましたが、ボンネットとのクリアランスのために、32DCOE以上のビッグキャブを入れるのは無理だったのです。現在研究中のフューエルインジェクションシステムが、この点を解決してくれるでしょう。   さて、続けてギアボックスについてもテリーに聞いてみよう。彼はクルマの開発中に “ギアレシオにも悩まされました。” “5スピードとしてはオーバーギアードだったので、レシオを落としました。” と言う。本誌P22(マーズスピード ストーリー その1 で紹介した記事)で紹介した赤いミニがそのセッティングになっている。   


そして“ヘリカルギアでないと嫌だという人は、ストックのレシオを使うことになります。ストレイトカットギアのノイズに付き合っていけるのなら、どんなレシオでもお好み次第です。このクルマのギアボックスはシンクロメッシュ付きで、レシオも理想的です。ただしノイジーですけどね。”ということだ。   


テリーは続けて“ヘリカルギアボックスが受け入れるトルクは、 95lb-ft(13.13kg-m)が限界で、ERAターボがパワーを控えているのもそのせいなのです。我われは、研究の目的でERA・ターボミニを一台買い入れました。それでわかったのが、ERAターボの4スピードギアボックスが94lb-ft(12.99kg-m)しか耐えられないという事実でした。しかし、ストレイトギアボックスを使えば、トルクリミットの天井は取り払われるのです。なにしろ、我われの190bhpレーサーでも、このギアコンビネーションで信頼性は完璧なのですから” と説明してくれた。   


ジャックナイト・5スピード・ミニでは、本来はなかったギアボックスの一角に、5速目とリバースのギアを置いている。ジャックナイトには6スピードギアボックスもあり、それではリバースギアはノーマルと同じ位置に据え、5速6速ギアの位置は逆サイドになっている。   


また、5スピードギアボックスは、数ヶ月前からイギリス市場に出回っており、あちこちで高い評価を得ているようだ。ジョン・クーパー、スウィフチューン、ミニスペアーズなどもジャックナイトのギアボックスをデモカーに使っていたし、今年モンテカルロラリーに参戦した4台のうち3台は、このジャックナイト・ギアボックスを積んでいたのである。これに勝る証明があるだろうか。