時代様式 リージェンシー 1811-1837年


時代様式 リージェンシー 1811-1837年

ロンドンにはリージェント・ストリート,リージェント・パーク,リージェント・スクエアというように,「リージェント」と名の付く場所があります.この「リージェント」,とは「摂政」のことで,具体的には後の国王ジョージ4世のことです.あれほど素晴らしいものを残したジョージ4世は,さぞかし名君と思いきや,この国王の死を伝えた新聞ザ・タイムズの記事は次のような酷評だったといいます.「親不孝者,最悪の夫,親でなし,不良の国民,悪い国王,そして悪い友.」

第一,ジョージ4世が摂政になったのも,父親のジョージ3世が子供達の親不孝が原因で精神異常を起こしたためです.特にジョージ4世の浪費癖は異常で,莫大な借金を作ります.借金の棒引きを条件に結婚した彼は気まま生活もできなくなりますが,その浪費癖は相変わらずで,建築に入れ込みます.皮肉にもそれが,一つの時代様式を作る結果となりました.
代表的な人物が,建築の世界ではジョーン・ナッシュ.家具の世界では,ヘンリー・ホランド,トーマス・シェラトン,トーマス・ホープが挙げられます.
当時,英国は既に大英帝国を築き上げていました.
このため,エジプトや中国,インドといったエスニックな様式が取り入れられます.一方で,約1世紀間続いた古代ギリシア・ローマを範とする新古典主義も頂点を迎えます.そこで,この時代の特徴は,これらの混合,と言えるかもしれません.「リージェンシー」には,次のウィリアム4世の在位期間も含まれます.その期間は僅か7年間でしたが,彼は兄のジョージ4世とは異なり,政治に辣腕を振るうとともに,国民に親しく接することで王権の信頼回復に成功します.そして,何よりも後の偉大な女王,ヴィクトリアの王位継承に万全を尽くしたことで,英国史に名を残しました.